Queen アルバム全解説

2月にQueenが来日します!来日は3年ぶりとなりますが、意外と短いスパンで来てくれて、前回を逃した私にとってはビッグニュースでした。今回が最後になっては悲劇なのでデカい金をはたきチケットを買いました。意外と周りにもQueenを見に行くという人が何人もいまして、嬉しくなってしまった私はQueenを聞き返し続けています。

 

映画が公開されてからは、恐らく世界で最も聞かれているロックバンドQueen。フレディ死後30年経った今でもこれだけの人達に聞かれるということは、彼らのポップネスがどれだけ特異で非凡であったかを物語っています。

 

小学生の頃出会い、それ以降私の音楽人生を決定づけた、私にとっての最も偉大なバンド、Queen。今回は全アルバムを私の好きな順番に解説し、Queenの魅力を改めて紹介出来たらなと思っています。

 

Queen ディスコグラフィ

1. Queen(S/T) (1973)

2. Queen 2 (1974)

3. Sheer Heart Attack (1974)

4. A Night at the Opera (1975)

5. A Day at the Races (1976)

6. News of the World (1977)

7. Jazz (1978)

8. The Game( 1980)

9. Flash Gordon (1980)

10. Hot Space (1982)

11. The Works (1984)

12. A Kind of Magic (1986)

13. The Miracle (1989)

14. Innuendo (1991)

15. Made In Heaven (1995)

 

フレディ・マーキュリーが1991に死去し、生前に作られた作品で構成されたラストアルバムまで15枚をオリジナル・アルバムとして、これらを私の好きな順番で紹介します。

 

 

 

1. Sheer Heart Attack (1974)

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Queenの魅力を1枚で語るのであれば間違いなくこのアルバムになるのではないだろうか。ライブ定番曲"Killer Queen"や"Now I'm Here"を収録し、さらに息つく間も無く連続するアルバム構成はAbbey RoadやThe Wallのようなアルバムを想起させる。ブライアン・メイの十八番の多重録音が光る"Brighten Rock"や"Stone Cold Crazy"のようなメイ作曲のハードロック、フレディのバラードがバランスよく配置され、ディーコンやテイラーの曲も収録されており、ビートルズの如く全員のセンスが凝縮される。最後の一瞬までノンストップで聞き込める、Queenがアルバム制作に最も力を込めた作品だ。1曲目の遊園地のざわめきの音の中に、前作のシングルカット曲、"Seven Seas Of Rhye"のメロディーが口笛で歌われていることに気づいたオタクは、この世に何人いるだろうか。とにかくまずはこのアルバムを聴いて、クイーンの魅力を感じて頂きたいのである。

 

2. A Night at the Opera (1975)

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Queenといえばの名盤である。誰もが知っている"Bohemian Rhapsody"だけでなく、"You're My Best Friend"や"39"、"Love of My Life"のようなバラードを是非聴いて頂きたい。これら全ての曲が、別々のメンバーから作られていることが驚きである。全体としてはバラバラな印象があるものの、1曲1曲が非常に作り込まれており、"The Prophet's Song"のように、ピンク・フロイドを想起させるような大作、ロジャーの激しい"I'm In Love With My Car"も聴きごたえがある。ボリューム感満載のQueen黄金期の1枚だ。

 

3. Innuendo (1991)

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世の中はグランジブリットポップで大騒ぎの中、このアルバムは時代とは異色の孤高の名盤だった。エイズに苦しみ死に際であったフレディが、力を振り絞るように作り出したアルバムである。最後の全てを注ぎ込んだかのような名曲揃いであり、後期のQueenが何をしていたのかを知る入門編としてはもちろん、Queenの全てを総括する1枚としても是非聴いて頂きたい。表題曲の"Innuendo"は"Bohemian Rhapsody"にも引けを取らない大作であり、フレディが病気にも関わらず、どれだけの創作意欲にかられてこの作品が作られているかが容易に理解出来る。"Headlong"や"These Are the Days of Our Lives"のようなキャッチーかつ美しい曲の先に、最後に力強く歌われる"The Show Must Go On"で、この傑作の偉大さが伝わるだろう。世界一の歌手であるフレディの持つクリエイティビティを、極限まで感じられる美しいアルバムだ。

 

4. A Day at the Races (1976)

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タイトルやジャケットから伝わるように、前作と相対する形で制作されたアルバムである。このアルバムは、中期以降キャッチーなヒットソングを絶え間なく作り続けたQueenの、独特のポップセンスが光るアルバムだ。フレディは"Somebody to Love"や"Good Old Fashioned Boy"等々、様々な形でそのメロディセンスを押し出している。最後の曲"Teo Toriatte"は日本語で歌われ、日本でのみシングルカットされており、我々には必聴の一曲だ。Queenの美しく暖かい歌の数々はこのアルバムで聞くことが出来る。

 

5. The Game (1980)

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ここから5枚ほどは正直順位をつけるのにかなり苦戦した。一応順番をつけたものの正直どれも同レベルで良いので甲乙つけ難いのである。

今作品はアメリカで最も売れたアルバムで、我らがクイーンの中期ポップネスが大爆発し、ロカビリーやR&Bを上手に取り込んで名ヒット曲が大量に生まれている。この辺りからディーコンやテイラーもかなり売れ曲を排出するようになる。"Another One Bites the Dust"などが好例だろう。フレディの最高のバラッド "Save Me"は餅論、ぜひ"Dragon Attack"や”Sail Away Sweet Sister”のようなキャッチーな隠れ名曲を楽しんでほしい。この次の作品でクイーンは大コケするが、このアルバムで幅を広げたことが結果的に逆効果になってしまったのではないだろうかと考察してみたりする。

 

6. News of the World (1977)

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"We Will Rock You"から始まり、間髪入れず "We Are the Champions"が流れるアルバムが、(信じ難いことに)この世には存在するのである。と書くとなんだか大袈裟に聞こえてしまうが、当時このアルバムが世に出た時にはその力強さにどれだけの人が心打たれただろうか。イギリスでパンクが大流行する中、その流れに負けじとシンプル路線で立ちはだかったクイーンの渾身の一作である。クイーンの個性であったはずのコーラスやギターの多重録音を減らしてもなお、これだけの作品を作ることができるその力量たるや、飛ぶ取り落とす勢いであったはずだ。初期に制作したものの収録されなかった"Sheer Heart Attack"や”Spread Your Wings”、"It's Late"のような力強い曲もあり、パンクのカウンターとして自らの歌心をしっかりと打ち出している。雑多感が随分と減り、クイーン流歌モノ路線を真っ直ぐと貫いた印象のアルバムだ。このアルバムからは、クイーンの歌心の上で売れ筋路線をいく、中期のアルバムと考えることができるだろう。

 

7. Queen 2 (1974)

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まだまだ評論家から時代遅れと辛口の評価を受けていた頃の彼らの2作目だ。評論とは異なり、シングルカットの"Seven Seas of Rhye"が売れ、本国ではチャート5位にランクインしている。サードアルバムに通じるような曲間無しでノンストップで進行するB面のスタイルはすでにこのアルバムから始まっており、ビートルズピンク・フロイドのスタイルを実験的に踏襲しようという気概がすでに見られる。A面の"Father To Sun"や"Some Day One Day"のような美メロソングもぜひ聞いていただきたいし、B面の彼ら流のアルバム構成スタイルもこの時期には十分に完成されていると思う。個人的には再評価されるべきだと考えているアルバムだ。

 

8. The Works (1984)

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前作で大コケした彼らが1年の休止ののちに帰ってきた作品である。この作品から個人的には後期と呼ぶ印象だ。今までの彼らのスタイルは影を潜め、かなり売れ筋路線の曲が多くなる。アルバムで聴くよりもシングルで聴く方が面白みが増すようにも取れるが、このアルバムだけは別で、シングルカットされた曲が容赦なく畳み掛けてくるというイケイケな作品なのである。"Radio Ga Ga"、"I Want To Break Free"を中心に誰もが知っている曲がバコバコ流れてくるので飽きることなく聴けるだろう。ライブ定番曲の"Hammer To Fall"やラストのバラード"Is This the World We Created...?"もぜひ楽しんでいただきたい。後期の作品では圧倒的に存在感がある作品である。このアルバムの後にかの有名なLive Aidが待ち受けているわけだ。伝説のバンド・Queenが最も輝いていた頃なのかもしれない。

 

9. Made In Heaven (1995)

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フレディ死後、未発表曲とフレディのソロ曲のバンドアレンジを中心に構成されたアルバム。その点ではある意味ベストアルバムのような体裁をとっている作品である。フレディのソロはいかんせんアレンジが私の知っている音楽の中でもトップレベルにダサいのだが、このアルバムではそんな影は全くなく、むしろ全てが名曲となって蘇っているのが印象的だ。"I Was Born To Love You"などが代表例だろう。すべての曲が美しい音とメロディで彩られていて、他のアルバムに引けを取らない。他にもフレディが死ぬ間際最後に録った"Mother Love"は、フロイドのようなおどろおどろしさの中に、彼の生への執着や死への覚悟が感じられる、素晴らしい曲になっている。彼らがその活動の中でどのように変遷していったのか、総まとめ的に綴られているのがこのアルバムなのかもしれない。最後の2つの隠しトラックも、遊び心ありつつフレディ亡きクイーンの悲しみが込められているようにも感じられる。個人的にはかなり好きなアルバムだ。

 

10. Jazz (1978)

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クイーンのディスコクラフィの中で最もおふざけ満載なのがこのアルバムではないだろうか。シングルカットされた”Fat Bottomed Girls”、"Bicycle Race"、"Don't Stop Me Now"どれをとっても全部おふざけである。歌詞が完全に言いたい放題だしテーマもアホっぽいのが曲名から伝わるのではないだろうか。これだけおふざけをしてなお大売れしているのがクイーンらしさであり、同時にクイーンの魅力なのだろう。一般的なクイーンのおふざけイメージがこのアルバムあたりから定着したのではないのかと思っている。個人的にはシングルカット以外の曲がそれほど好印象ではないのでこの位置にはあるが、とにかくシングルは名曲揃いだ。どれもライブで聴けることを楽しみにしている。

 

11. A Kind of Magic (1986)

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通して聴くほどではないアルバムたちがここからは続く・・・(果たして1ファンがこんなことを言っていいのだろうか?)。

後期のクイーンはやはりシングルカットされた曲がとても素晴らしいのでベスト2を聞いた方が手っ取り早いようにも思える。このアルバムは"One Vision"、"A Kind of Magic"の2曲から始まるのが非常にキャッチーなアルバムだ。それ以外の曲は80年代あるあるのポップソングが並んでいる印象だ。月並みの曲と言ってはそれまでだが、フレディの歌声が美しく響くのでファンならば絶対に聞いておくべきだろう。”Who Wants To Live Forever”は悲壮感と大スケールの一曲なのでぜひ聞いてみてほしい。小学生の頃一時期このアルバムにどハマりしていたことがあったが、要するに80年代のポップソングの雰囲気が好きになっていた時期だったのだと思う。

 

12. Queen (1973)

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この世にはファーストアルバムが評価されるバンドと、ファーストアルバムがこき下ろされるバンドがあり、彼らは後者だった。時代遅れのグラムロックと評され、特に売れた曲もなく、バンド名のちょっとゲイっぽい感じがすでに馬鹿にされていたバンドである。実際に聴いてみると初めて制作したという雰囲気がバリバリに纏ってあり、とりあえず作るという強い意志を感じる。それでもすでに多重録音に手を出したり、最後の曲が次のアルバムの"Seven Seas Of Rhye"の短いバージョンで、自作への繋がりをすでに意識していたりと、かなり遊び心満載に楽しんでいることが伝わる。このアルバムを聴いて、彼らが世界一のバンドに成長することを予見した人たちがどれだけいたのだろうか。愛を持って聴いてほしいアルバムだ。

 

13. Hot Space(1982)

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俗に失敗作と言われるこのアルバム。流行りのR&Bを取り入れた結果、今までの雰囲気と大分変わってしまい、ファン評論家ともに総スカンを喰らって、バンドは一時解散してしまう。実際に聞くと、確かにマイケル・ジャクソンのパチモンという印象は強いし、"Body Language"がやたらゲイ臭くて厳しいところもある。個人的には"Action This Day"が好きだし、B面は全体的に従来のQueenらしさは十分だし、何より最後の曲が"Under Pressure"であることから、簡単には全否定できない。しかし、やっぱりクソはクソである。しょうがない。

 

14. The Miracle (1986)

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シングル曲は"The Miracle"、"I Want It All"、"Breakthru"となかなか良いのだが、アルバムを通して聞くと最も個性の薄い作品のようだ。前作同様80年代臭がかなり強く、特段彼らの個性がないような気がする。やはりベストでさらっておけばOKな気がする。こんなアルバムでも全英1位を取っていたのだからQueenは本当に凄いバンドだ。

 

15 Flash Gordon (1980)

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映画のサントラなのになぜかディスコグラフィに含まれている。しょうがないのでとりあえず入れて置いたが、最初の曲と最後の曲だけ聞いていればokだ。映画は全く良い評判を聞かないのでわざと見ないようにしている。きっとこれからも見ることは無いだろう、、、

 

 

 

ということで以上、Queenアルバム全解説でした。

ここまで書いてなんですが、初めてQueenを聞く方はベスト盤の2枚を聞いていただければいいと思います。小学生の頃死ぬほど聞いていましたし、今でもベストが1番聴きごたえがあります。

それにしても2024年に聞いても個性爆発最高のバンドでございます。昔は本当にQueen以外のバンドを聞かなかったので分かりませんでしたが、今聞くとあらゆる影響が重なり合っていることもよく分かります。

 

皆さんもガンガンQueen聞きましょう。そんで東京ドームで一緒に歌おう。

 

以上

いくつかのエッセイ(2023/12/2)

久々に入ったバイトがあまりにも暇なので、流石に何かしようと思い、歌詞を書こうかと思ったが、俺は音価を気にして歌詞を書く人間なので早々にあきらめた。

次に少々歌を歌ってみたが、一応接客業なのでお客さんに聞こえたらまずいと思いやめる。

最終的に行き着いたのが文章を書くことである。これならうちのバイトはやりたい放題やれる。

SNS

SNSをやっている人間はダサい、という論説というか考えをたまに聞く。俺は大概賛成である。インスタもツイッターもやらなければやっていないほど良い。人間的に信頼を置きやすいから。特にツイッターなんてポチポチ更新して、自分の日常的な苛立ちを書いている人には接しづらい。そして格好よくSNSをやる、なんて概念はそもそも存在していない。SNSなんてどう頑張っても格好が悪くなる一方である。

なんてことを考え始めたので、最近は少しツイッターをやらなくなってきた。大体あんな短い文章しか書けないSNSで精神や時間を消耗するのは馬鹿げているぜ。俺はそんなものとっととやめようと思う。あれは自分の活動を拡散するためのSNSです。大体もってSNSというものは暇人しかやらんのである。

 

それにめっちゃ通知を気にしてしまいませんか?一応OFFにはしているものの、たまに通知が来ていないか気になってみてしまう。こういう癖は意識的に変えるよりほかにないのでどうしようもない。頑張ってやめようと思う。サンクラのリスナー分析とかも見ちゃうけど本当に無駄だからやめるべきだと思う。数字を気にしている時間がどれだけもったいないか、流石にわかってきた。

 

休学

俺は今完全に社会的に暇人である。大学を半期休学し、カレンダーの予定は見事にすっからかんになってしまった。特に平日は何の予定も入っていない。単発バイトでもしないと大変なことになってしまう。

思えば自分は、生涯で一度も何もしていない、何者でもない時間というものがなかった。一応定義上はまだ学生だが、実際に大学に行っているわけでもないので事実上のフリーターである。一応不眠動悸は続いているので治すことに専念するという理由があるのだが、まあようは何もするなということだ。とはいえこの時間を有効に使っていきたい。映画見たり本を読んだりしようと思う。部屋の中で自分の世界をもっと広げられたらいいな、と思う次第だ(カル活の最高の言い替えである)。

 

音楽の話

近況の話でもしよう。まず私のバンド1/8計画と、尊敬している先輩バンドjakとの合同主催スタジオライブ「開発日記」があった。これがどうしてなかなかに大成功を収めた。笹塚のスタジオがいっぱいになるほどの来客があり、我々も演奏がかなり上手くいったし、他のバンドも多種多様な音楽性を持ちつつ、非常にハイレベルな思想と技術で我々を魅了してくれた。当然身内の来客が基本のイベントではあったが、それでも自分の企画したイベントが、あれだけうまくいくとは思っていなかったので感無量である。vol.2を開催できるように頑張っていくつもりだ。

 

バンドはこれから録音&作品発表に本腰を入れていくつもりだ。バンドとして評価されるには、作品が必要だとわかってきた。大きく期待していてほしい。それに作品を作ることは考えるだけでも楽しい。きっとみんなが驚く最高のものが出来上がるに違いない、なんて空想ばかりしている。俺は空想生まれ空想育ちの人間だ。しかしメンバー都合でかなり急ピッチに製作が進むことになるので、非常にドキドキしている。休学なんて言っておいてすごく忙しくなりそうだ。

 

歌物の曲を発表する機会も会得しつつある。いろいろと水面下で進めてはいるのだが、まずは私の今のところの代表曲「天使が目を覚ます」をぜひサンクラで聞いていただきたい。脳内を支配すること間違いなしのキャッチーな曲、とかなりの太鼓判を押されて自身が沸いている。録音&リミックスに協力してくれた青山、市瀬さん、りょーくん本当にありがとう。そしてこの曲を人前でやったり、作品として発表する機会は今頑張って作っている。1/8計画と並行してこれも頑張るつもりだ。

 

弾き語りライブもやりたいなあ。たくさん曲を書いたのでそろそろ溜まってきた。借りものだがアコギも修理して、かなり準備万端モードに入っている(歌はもう少し練習しなければいけないが)。もし弾き語りライブに出る方法を知っていたり、企画している方は俺に教えてください。お願いします。

本当は本格的にDTMもやりたくて、Ableton買おうか迷っている。4万円するが、機能の多さを考えたら破格である。もし購入したら、エレクトロニクスにも足を踏み入れて音楽性を大幅に広げたり、サウンドアートにも挑戦してみたいものである。しかしそれはもう少し先の話になりそうだ。

 

金(money)

とりあえずはお金を稼がなくちゃ。バイトは今月から少しずつ復活して増やしてもらうことにした。金はあればあるほどいい。

 

服にやたら金をかけてしまった。あまり衝動的に金を大量に使うことはないのだが、まあ今回は鬱になったし自分へのご褒美として許してやることにした。見た目がよくなったら自己肯定感も少しは上がるんじゃないかしらと期待している。

とにかく金がない。困ったなあ。俺はスロウダイヴの来日チケットを買う金がないのですが。なにか単発バイトしなくちゃ。

家にこもって出費を減らし、できる限り楽しいことに思いっきり使いたいと思う。小さな幸せって金をかけずに得るべきだよ。

2023/11/15(前書き、及び近日の狂った私について)

一週間が経過しようとしている。心療内科で鬱の診断をもらってから、俺は完全に全ての責任、仕事、課題を放棄してしまった。

 

責任感を強く感じる俺にとって、全てのことを投げ出すのには少し勇気が必要だった。授業に出ないこと、バイトを休むこと、サークルのコピーバンドの予定を蹴ること、人との付き合いを断ち切ること、SNSを消すこと。連絡を取ると皆慰めの言葉を送ってくれるが、そこからは少なからずの失意を文から読み取ることができる。失意を感じられることが俺にとって一番怖いことだったのだろうか。わからない。とにかく今俺は授業にも出ていない。大学の授業は何の責任も負わないからサラッと休めてしまう。

今まで当たり前のようにしていたことが、「プツッ」と小さな音を立てて何もできなくなってしまった。これは何の音だったのだろうか。緊張の糸が切れた音、感情を司るコネクターの切れる音、はたまた社会活動のための電源ブレーカーが落ちた音。もしかしたら全部が切れてしまったのかもしれない。

 

体の制御が効かなくなってきたのは、学祭が終わった直後だった。動悸が酷くなっていた。立っているのも辛い時があった。

学祭の直前はあらゆることが立て込んで大変だった。課題もやたらと多かったし、サークル関連の仕事、長時間のバイトで、自分の時間なんてものは無くなってしまった。朝5時に目覚めると、不眠で体が締め付けられているような感覚になる。学祭自体はとても素敵な時間だった。音楽は俺にとって何よりも重要なものだから。音楽を聴いたり演奏している間は、自分が自分を超えていく瞬間だ。自分のなりたい自分に勝手に自分が飛び出して向かっていく。羽ばたいているような気持ちになる。三センチくらい浮いているのではないかしら。

学祭が終わった後の飲み会で、突然涙が止まらなくなるフェーズがあった。「どうして俺だけが苦しい思いをしなければいけないんだ!!!!」と泣き叫んでいた。言葉が何の思考も介さずに出てくる時、私は自分の言葉にハッとさせられることがある。それは音楽と同じだ。

当然、皆きっと私と同じように苦しんでいるだろう。俺はもう他人や社会の中の一個人としての俺を見失っていたのだろうか。俺は俺でいることに精一杯だった。それももう限界に達してしまったのだが。

 

精神が苦しめられると肉体が苦しみを訴える。不眠、下痢、動悸といった症状。薬を処方してもらって不眠と下痢はだいぶ楽になった。動悸はまだもう少し続いている。特に考え事が止まらなくなった時。数十分布団にこもって後悔したり嫌悪感に苦しめられたり怒りを抑えられなくなったりして、突然自分の状態がおかしいことに気づく。こんな状態、インフルエンザの時の自分と同じだとようやく気がついて、ようやく心療内科に向かった。

医者は止めどなく来る患者を捌くのに精一杯だ。簡単に処方箋も出してくれたし、ちょっとしたチェックシートごときで俺をうつ病だと言い切りやがった。せめて脈くらいみやがれ。心電図でもとってみたらどうだ。豚メガネ。くたばれ。

違う。これは全く違う。俺は本当は話を誰かに聞いて欲しいのに、理論的に人間の状態を捉えるのが本業の人に助けを求めたからこうなるのだ。薬をもらえた、診断書をもらえた。これで十分なのだ。ただ、それは根本の解決にならないって、ただそれだけ。

 

自分の時間ができて数日してから、俺は音楽を聴いたり映画を見れるようになった。集中して何かに向かうのが辛かった時期を抜け出すと、ようやく落ち着いて何かを享受できるようになる。この一週間で九本くらい映画を見たが、特に良かったのはパリ・テキサス、それにジム・ジャームッシュのナイト・オン・ザ・プラネット、あとはゴダール勝手にしやがれソラニンもみたが、これについては気持ちの悪いオタクのキモキモ語りになってしまうだろうからやめておく。音楽は適当に聴きまくっている。ただ激しい音楽はまだ聞けない。そもそも最近あまり聞いていないので当分聞くことはないだろう。

これがここんとこの俺。

2023/11/15(本編)

俺は今日は外に出ようと決心して昨日から準備を進めていた。まず部屋の整理をした。自分の部屋が散らかっていてどうしようもないので、それを綺麗にするための準備。部屋が綺麗になったら、自分のやりたいことが浮き上がってくるのではないのかしら、というあまり根拠のない理由だった。その後本棚を整理した。本棚は買い足そうと思っている。これを書き上げたらニトリのサイトでも見てみよう。そしたら大量の借りっ放しの本が出てくる。図書館の期限切れの本が七冊、サークルの部屋から借りた漫画がいくつか。これらをいつものトートバッグにまとめ、適当な袋にハイライトとライター(酔っ払った勢いで買ってしまった!最近毎日のように酒を摂取している。酒がないと人と喋れない)、財布、買ったものの履いていなかったディッキーズのチノと、誰のかわからないがクローゼットに一年以上あるスウェットを準備して寝た。

 

翌朝、俺は十一時に起きた。いつも六時くらいに起きていた俺にとっては、かなり狂っている状態にある。二日酔いの時だって、とっくに起きて全てを呪いながら大量の水を飲んでいる時間だ。親が残していてくれたパンと、牛乳を突っ込んだリプトンを腹にぶち込み、映画のソラニンの続きの一番いい部分を見た後、俺は家を出た。

大学までは荷物が重くて移動で精一杯だった。聞いていた音楽はポストロックのアーティストが幾つかとソラニン。家を出る途中、駅までの道で帽子が落ちていた。誰かがご丁寧に目のつくところに引っ掛けていたが、まあ元の持ち主が取りにくることもないだろうし、なんだが被ってみたくなって、もらっていくことにした。俺が被るとサブカルバンドのボーカルみたいだ。フィッシュマンズ、アート・スクール、フジファブリック。なんでもいいのだが、なんだかその辺の人たちのようになって嬉しかった。それか詐欺で捕まって連行されている大学生。


大学で本を返すと、延滞していたので明日から貸出停止になりますと言われた。はあ、と俺は答えてスマホを見ながら図書館を後にしようとすると、ゲートが開かない。女性の司書に「出口は右側です」と言われ、数秒呆けた後、自分が情けないことをしていることに気がついた。右側のゲートはすんなり俺を外へ通してくれた。

 

次にサークルの部室へ向かう。部室へ行く途中知り合いにあった。板垣くんおつかれ、と言われておう、と返した。なんか険しい顔してるじゃんと言われた。ここ2週間くらいだろうか、会う人に度々そう言われる。俺は気がついたら怖い顔の人間になってしまったらしい。その時何を考えていたのかとかは正直よく覚えていない。

二つの部室に用があった。片方は誰もいなかったので、今まで借りていた漫画を返して、一冊手塚治虫を借りた。プーシキンのオネーギンも借りたものの、家に帰ったら全く同じものを昔古本で買っていた。またいい本があったら借りようと思う。

もう一つのサークルの部屋は二人の部員がいた。一人は一つ上の先輩で、Wiiでマリカをやって空きコマを潰しているようだった。もう一人は何故か部室で英語のプレゼンの課題をやっていた。俺は面白そうな漫画を漁り、ソラニンの上巻とピンポンの1、2巻を発掘した。部室には何故か黒染めのアクティブのレスポールが置いてあった。自分のバンドに黒染めのギターを使いたいとその朝何となく考えていた俺は、それを見ていたく感動し少し試奏した。誰も使う人がいないのなら、勝手に持って帰って改造して、自分のバンドに使おうと思う。

ソラニンの上巻を読んだ。映画の方はあるあるの陳腐なナレーションとキャメラワーク(大学の教授はずっとこんな映画批評をしていた)だと感じ、後半のライブシーンまで結構退屈しながら見てた(後半は本当に最高だったぜ。宮崎あおいにギターを持たせた人は天才だと思うぜ)。だが漫画は浅野特有のコミカルな口調で話が進んでいき、それでも俺らみたいな悩みを思いっきり吐露して、さらに彼独特のコマ割りスタイルを使って、反復したり途切れたり、本当にこの人は天才なのかもしれないと思った。下巻はいつか読もうと思うが、別に読まなくても十分伝わったような気もしている。ソラニンを聞き直したら部室で一人でこっそり泣きそうになっていた。

 

 

ゆるい幸せがだらっと続くのに、続けばいいのに、どうしてそれが終わることをずっと頭の片隅で考え続けなきゃいけないんだろうね。

 

 

部室を後にした俺は金をおろし(先月分の給料が今日振り込まれた、夏のゼミでの出張分の旅費も降りて大満足だ)、最寄りの喫茶店へ行った。数日前にコーヒーアンドシガレッツを見て非常に感動した俺は、コーヒーを飲んでタバコをやらねば耐えることができないと考えていたので、ほぼノータイム直行した。

 

 

結局一人でこれをやるのはあまり素敵なことではなく、部室で発掘した九段理恵とやらの小説を読んだ。これがどうしてなかなか良く、独身片親に育てられたカルチャー系の母親が子供とのすれ違いを深く考えこむという内容で、ちょうど我々世代のグローバル視点とカルチャー的な内向的な価値観が、親子という舞台上ですれ違うという流れだった。最後に「80年台のドリームポップ」が流れるくだりがあり、ロビン・ガスリーという名前が出てきた。ググるコクトー・ツインズのギタリストであり、そんなの誰がわかるんだよと苦笑して店を出て『Ivo』を聞いた。コーヒーは450円だった。

 

絶対に服を買おうと決めていた俺は帰り道にある古着屋に寄った。なんとなく服を見ていると、店員が話しかけてきた。俺より一回りくらい上の、メガネをかけた女性で、物腰柔らかく非常に話しやすい人だった。俺は一人で服を買う時、もう一人の自分が俺に

「何カッコつけてんだよ、お前ダサいのに背伸びしてて見苦しいよ」と後ろ指を立てているような気分になって、どうしても苦しい。だから、誰かが話しかけてくれて一緒に服を考えてくれると、すごく楽になる。自分の好みの服を見つけて、それに合う服を探すのは本当に楽しかった。こんなに楽しかったっけ、久々にすごく笑った気がする。青緑みたいな色のニットと赤っぽいパンツで6500円。なんだか素敵な買い物をした。早くこの服を誰かに見せたいと思った時、俺はすごくすごく胸が苦しくなった。いつもの動悸だ。家に帰ってまた薬を飲もうと思う。

 

KIRETA OTAKU

カルチャーは、定義ではあるが、別に個性ではない。
別にあなたがどのような人間かは定義しないし、あなたがどこに所属しているかを定義はしない。
どのような音楽を聴いているかであなたの個性は決まらないし、むしろ同族意識を持っている方が危険だったりする。

 

 

東京藝大で向井秀徳のフリーコンサートがあった時、会場は「サブカル」の人間で埋め尽くされた。
まずこの段階で既にちょっと気持ち悪い状況にはなっているが、別に藝大にも向井好きがいるから呼ばれたのだろう、という思考で落ち着かせておこう。
肝心だったのは、別にサブカルの人間は一目見ただけでは、サブカルチャーが大好きな人間だとはわからないということだ。


当然ファッションなんて千差万別なので、よっぽど詳しい人じゃない限り、見た瞬間で「こいつ・・・」となることは(さほど)ないと思う。強いて言うならば、例えば古着は見分けやすいけど、古着はサブカルの要素であって定義ではない。皆同じような服装で同じような音楽を聴いていたら、それはすごく不気味なことだし、ロックからかけ離れている。だが、この瞬間においては、別にそんなことは無いわけだ。

 

 

だが!!!!!!!!!オレをイライラさせるバカな人間がいるのだ。

 

 

最前列で待機して、向井秀徳が登場した瞬間、キャーだのひゃーだのと黄色い声を上げる、黒髪ボブの見るからにアホな女とか。隣の男になだめられていたが、こんな女と一緒にいる男もたかが知れているぜ。
四角で変な色のメガネをかけ、早口でモゴモゴとナンバガうんちくを垂れ流す、低身長の男二人組とか。汗が臭かったぜ。学生の時運動していなかったのが良くわかる。

 

俺も同族なのか。間違いなく趣味は同じだが、俺とこいつは同じなのか。
多分違うのだ。全く考えていることが違う。全くだ。
結局人間性は何が好きかでは決まらない。ある程度コンテンツを絞れば、当然似通った人も増えるだろうが、やっぱり決まらない。全然違う。ぜんぜんちがう。

 

こういう輩は秋葉原にもいるだろうし、なんなら高校のクラスにもいた。別に俺とは関係なかったが、やっぱりいた。
今、俺が輩共について言及しなければいけない状態になったのは、要するにあまりに俺たちに近い存在になってしまったからだ。
こんな奴らがいい音楽を書いたり、いい文章を書けると思うか?面白い話をしてくれるか?自分を顧みないやつが、どうやって自己表現をするのか。
『お前たちは自分の趣味のマイナーさに驕り、自分を過大評価していないか?
何を好きになるかは、お前自身じゃなくてお前の過去の経験が決めるんだぜ。気付いたことがあるかい?自発的なものじゃないのさ。
勿論程度にもよるがね。』

 

 

 

俺の周りにいる人たちは本当に素敵な人たちで、自分の社会的な立ち位置をいつもよく考えている。素敵な人たちだ。考えているから、その分生き辛そうで苦しんでいる。皆苦しんでいる。苦しみを美徳と思わないが、苦しみの分だけ思想がある。思想はあった方がいい。人前で上品になれるし、落ち着いて生きていける。

別にこの世の全員が文化的生産をするべきだ!!!なんてけったいな思想を持っている訳ではない。ただ、人間的に良く出来ている奴であろうぜ、というだけの話だ。いい年して他人にドン引きとかされたくないからね。
俺は突然大きい声を出すのとか、モゴモゴ喋るのを早く止めたいね。きっと引かれているからね。

 

 


「カルチャー活動」という言葉についても少し言及しておきたい。俺はこんなにダサくて狂った言葉を世に放ってしまったことを、かなり後悔している。これはひどい言葉だ。何故か?自分の趣味を、高尚なものだ、と誇示しようとするいやらしさが溢れているからだ。ちょっとマイナーな映画を見ている自分を、別に作家でもなければ大した理解もしていない癖に(それは勿論程度に依るけどさ)、偉くて文化的に優れていて高尚だと思っている。その上(その癖に!)、自分をカルチャーというカテゴリに当てはめて、定義してしまう。これがどれだけ下品か皆さんはお分かりですか?これは自分自身についての思考をしない人間がする行為ですよ。あなたにはあなただけの過去と思想があるじゃないですか。勿体ないよ、マジで。

 

俺がカルチャーがどうこうみたいな発言をして、それが他の人をいらだたせたり悲しませたりしている気がして、本当に良くないとは思っています。

私は皆さんの趣味には一ミリも言及しません。色んな趣味があって、それがどのようなコンテンツであろうが関係ないです。別にKPOP聞いていようが、原神をやっていようが、キモいノイズとか聞いていようが、いい人はいい人だと思います。

そして何より自分の趣味を誇りをもって楽しんでいる人が俺は大好きです。カッコよくて尊敬しています。皆目を輝かせて自分の好きなものを享受して、分析して、語らっています。そうした瞬間はカルチャーのもたらす最も美しい光景です。

問題はどんな人かってただそれだけです。俺は、「カルチャー活動」なんて言うやつとは仲良くなれないというだけです。面白半分でも使えないです。

だってさ、俺これから音楽を本気で作ろうって言うのにさ、自分の活動を「カルチャー」の一言で済まされたら、俺もうこの世にいる意味なんてないぜ?

 

そういえば向井秀徳のフリーコンサートで、制服を着た女子高校生が一人で見ていた。軽音学部に入っていたりするのだろうか。誰とも話が合わなくて、一人で見に来たのだろうか。これから素敵な人になっていくのだろうと思った。