Queen アルバム全解説

2月にQueenが来日します!来日は3年ぶりとなりますが、意外と短いスパンで来てくれて、前回を逃した私にとってはビッグニュースでした。今回が最後になっては悲劇なのでデカい金をはたきチケットを買いました。意外と周りにもQueenを見に行くという人が何人もいまして、嬉しくなってしまった私はQueenを聞き返し続けています。

 

映画が公開されてからは、恐らく世界で最も聞かれているロックバンドQueen。フレディ死後30年経った今でもこれだけの人達に聞かれるということは、彼らのポップネスがどれだけ特異で非凡であったかを物語っています。

 

小学生の頃出会い、それ以降私の音楽人生を決定づけた、私にとっての最も偉大なバンド、Queen。今回は全アルバムを私の好きな順番に解説し、Queenの魅力を改めて紹介出来たらなと思っています。

 

Queen ディスコグラフィ

1. Queen(S/T) (1973)

2. Queen 2 (1974)

3. Sheer Heart Attack (1974)

4. A Night at the Opera (1975)

5. A Day at the Races (1976)

6. News of the World (1977)

7. Jazz (1978)

8. The Game( 1980)

9. Flash Gordon (1980)

10. Hot Space (1982)

11. The Works (1984)

12. A Kind of Magic (1986)

13. The Miracle (1989)

14. Innuendo (1991)

15. Made In Heaven (1995)

 

フレディ・マーキュリーが1991に死去し、生前に作られた作品で構成されたラストアルバムまで15枚をオリジナル・アルバムとして、これらを私の好きな順番で紹介します。

 

 

 

1. Sheer Heart Attack (1974)

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Queenの魅力を1枚で語るのであれば間違いなくこのアルバムになるのではないだろうか。ライブ定番曲"Killer Queen"や"Now I'm Here"を収録し、さらに息つく間も無く連続するアルバム構成はAbbey RoadやThe Wallのようなアルバムを想起させる。ブライアン・メイの十八番の多重録音が光る"Brighten Rock"や"Stone Cold Crazy"のようなメイ作曲のハードロック、フレディのバラードがバランスよく配置され、ディーコンやテイラーの曲も収録されており、ビートルズの如く全員のセンスが凝縮される。最後の一瞬までノンストップで聞き込める、Queenがアルバム制作に最も力を込めた作品だ。1曲目の遊園地のざわめきの音の中に、前作のシングルカット曲、"Seven Seas Of Rhye"のメロディーが口笛で歌われていることに気づいたオタクは、この世に何人いるだろうか。とにかくまずはこのアルバムを聴いて、クイーンの魅力を感じて頂きたいのである。

 

2. A Night at the Opera (1975)

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Queenといえばの名盤である。誰もが知っている"Bohemian Rhapsody"だけでなく、"You're My Best Friend"や"39"、"Love of My Life"のようなバラードを是非聴いて頂きたい。これら全ての曲が、別々のメンバーから作られていることが驚きである。全体としてはバラバラな印象があるものの、1曲1曲が非常に作り込まれており、"The Prophet's Song"のように、ピンク・フロイドを想起させるような大作、ロジャーの激しい"I'm In Love With My Car"も聴きごたえがある。ボリューム感満載のQueen黄金期の1枚だ。

 

3. Innuendo (1991)

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世の中はグランジブリットポップで大騒ぎの中、このアルバムは時代とは異色の孤高の名盤だった。エイズに苦しみ死に際であったフレディが、力を振り絞るように作り出したアルバムである。最後の全てを注ぎ込んだかのような名曲揃いであり、後期のQueenが何をしていたのかを知る入門編としてはもちろん、Queenの全てを総括する1枚としても是非聴いて頂きたい。表題曲の"Innuendo"は"Bohemian Rhapsody"にも引けを取らない大作であり、フレディが病気にも関わらず、どれだけの創作意欲にかられてこの作品が作られているかが容易に理解出来る。"Headlong"や"These Are the Days of Our Lives"のようなキャッチーかつ美しい曲の先に、最後に力強く歌われる"The Show Must Go On"で、この傑作の偉大さが伝わるだろう。世界一の歌手であるフレディの持つクリエイティビティを、極限まで感じられる美しいアルバムだ。

 

4. A Day at the Races (1976)

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タイトルやジャケットから伝わるように、前作と相対する形で制作されたアルバムである。このアルバムは、中期以降キャッチーなヒットソングを絶え間なく作り続けたQueenの、独特のポップセンスが光るアルバムだ。フレディは"Somebody to Love"や"Good Old Fashioned Boy"等々、様々な形でそのメロディセンスを押し出している。最後の曲"Teo Toriatte"は日本語で歌われ、日本でのみシングルカットされており、我々には必聴の一曲だ。Queenの美しく暖かい歌の数々はこのアルバムで聞くことが出来る。

 

5. The Game (1980)

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ここから5枚ほどは正直順位をつけるのにかなり苦戦した。一応順番をつけたものの正直どれも同レベルで良いので甲乙つけ難いのである。

今作品はアメリカで最も売れたアルバムで、我らがクイーンの中期ポップネスが大爆発し、ロカビリーやR&Bを上手に取り込んで名ヒット曲が大量に生まれている。この辺りからディーコンやテイラーもかなり売れ曲を排出するようになる。"Another One Bites the Dust"などが好例だろう。フレディの最高のバラッド "Save Me"は餅論、ぜひ"Dragon Attack"や”Sail Away Sweet Sister”のようなキャッチーな隠れ名曲を楽しんでほしい。この次の作品でクイーンは大コケするが、このアルバムで幅を広げたことが結果的に逆効果になってしまったのではないだろうかと考察してみたりする。

 

6. News of the World (1977)

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"We Will Rock You"から始まり、間髪入れず "We Are the Champions"が流れるアルバムが、(信じ難いことに)この世には存在するのである。と書くとなんだか大袈裟に聞こえてしまうが、当時このアルバムが世に出た時にはその力強さにどれだけの人が心打たれただろうか。イギリスでパンクが大流行する中、その流れに負けじとシンプル路線で立ちはだかったクイーンの渾身の一作である。クイーンの個性であったはずのコーラスやギターの多重録音を減らしてもなお、これだけの作品を作ることができるその力量たるや、飛ぶ取り落とす勢いであったはずだ。初期に制作したものの収録されなかった"Sheer Heart Attack"や”Spread Your Wings”、"It's Late"のような力強い曲もあり、パンクのカウンターとして自らの歌心をしっかりと打ち出している。雑多感が随分と減り、クイーン流歌モノ路線を真っ直ぐと貫いた印象のアルバムだ。このアルバムからは、クイーンの歌心の上で売れ筋路線をいく、中期のアルバムと考えることができるだろう。

 

7. Queen 2 (1974)

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まだまだ評論家から時代遅れと辛口の評価を受けていた頃の彼らの2作目だ。評論とは異なり、シングルカットの"Seven Seas of Rhye"が売れ、本国ではチャート5位にランクインしている。サードアルバムに通じるような曲間無しでノンストップで進行するB面のスタイルはすでにこのアルバムから始まっており、ビートルズピンク・フロイドのスタイルを実験的に踏襲しようという気概がすでに見られる。A面の"Father To Sun"や"Some Day One Day"のような美メロソングもぜひ聞いていただきたいし、B面の彼ら流のアルバム構成スタイルもこの時期には十分に完成されていると思う。個人的には再評価されるべきだと考えているアルバムだ。

 

8. The Works (1984)

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前作で大コケした彼らが1年の休止ののちに帰ってきた作品である。この作品から個人的には後期と呼ぶ印象だ。今までの彼らのスタイルは影を潜め、かなり売れ筋路線の曲が多くなる。アルバムで聴くよりもシングルで聴く方が面白みが増すようにも取れるが、このアルバムだけは別で、シングルカットされた曲が容赦なく畳み掛けてくるというイケイケな作品なのである。"Radio Ga Ga"、"I Want To Break Free"を中心に誰もが知っている曲がバコバコ流れてくるので飽きることなく聴けるだろう。ライブ定番曲の"Hammer To Fall"やラストのバラード"Is This the World We Created...?"もぜひ楽しんでいただきたい。後期の作品では圧倒的に存在感がある作品である。このアルバムの後にかの有名なLive Aidが待ち受けているわけだ。伝説のバンド・Queenが最も輝いていた頃なのかもしれない。

 

9. Made In Heaven (1995)

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フレディ死後、未発表曲とフレディのソロ曲のバンドアレンジを中心に構成されたアルバム。その点ではある意味ベストアルバムのような体裁をとっている作品である。フレディのソロはいかんせんアレンジが私の知っている音楽の中でもトップレベルにダサいのだが、このアルバムではそんな影は全くなく、むしろ全てが名曲となって蘇っているのが印象的だ。"I Was Born To Love You"などが代表例だろう。すべての曲が美しい音とメロディで彩られていて、他のアルバムに引けを取らない。他にもフレディが死ぬ間際最後に録った"Mother Love"は、フロイドのようなおどろおどろしさの中に、彼の生への執着や死への覚悟が感じられる、素晴らしい曲になっている。彼らがその活動の中でどのように変遷していったのか、総まとめ的に綴られているのがこのアルバムなのかもしれない。最後の2つの隠しトラックも、遊び心ありつつフレディ亡きクイーンの悲しみが込められているようにも感じられる。個人的にはかなり好きなアルバムだ。

 

10. Jazz (1978)

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クイーンのディスコクラフィの中で最もおふざけ満載なのがこのアルバムではないだろうか。シングルカットされた”Fat Bottomed Girls”、"Bicycle Race"、"Don't Stop Me Now"どれをとっても全部おふざけである。歌詞が完全に言いたい放題だしテーマもアホっぽいのが曲名から伝わるのではないだろうか。これだけおふざけをしてなお大売れしているのがクイーンらしさであり、同時にクイーンの魅力なのだろう。一般的なクイーンのおふざけイメージがこのアルバムあたりから定着したのではないのかと思っている。個人的にはシングルカット以外の曲がそれほど好印象ではないのでこの位置にはあるが、とにかくシングルは名曲揃いだ。どれもライブで聴けることを楽しみにしている。

 

11. A Kind of Magic (1986)

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通して聴くほどではないアルバムたちがここからは続く・・・(果たして1ファンがこんなことを言っていいのだろうか?)。

後期のクイーンはやはりシングルカットされた曲がとても素晴らしいのでベスト2を聞いた方が手っ取り早いようにも思える。このアルバムは"One Vision"、"A Kind of Magic"の2曲から始まるのが非常にキャッチーなアルバムだ。それ以外の曲は80年代あるあるのポップソングが並んでいる印象だ。月並みの曲と言ってはそれまでだが、フレディの歌声が美しく響くのでファンならば絶対に聞いておくべきだろう。”Who Wants To Live Forever”は悲壮感と大スケールの一曲なのでぜひ聞いてみてほしい。小学生の頃一時期このアルバムにどハマりしていたことがあったが、要するに80年代のポップソングの雰囲気が好きになっていた時期だったのだと思う。

 

12. Queen (1973)

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この世にはファーストアルバムが評価されるバンドと、ファーストアルバムがこき下ろされるバンドがあり、彼らは後者だった。時代遅れのグラムロックと評され、特に売れた曲もなく、バンド名のちょっとゲイっぽい感じがすでに馬鹿にされていたバンドである。実際に聴いてみると初めて制作したという雰囲気がバリバリに纏ってあり、とりあえず作るという強い意志を感じる。それでもすでに多重録音に手を出したり、最後の曲が次のアルバムの"Seven Seas Of Rhye"の短いバージョンで、自作への繋がりをすでに意識していたりと、かなり遊び心満載に楽しんでいることが伝わる。このアルバムを聴いて、彼らが世界一のバンドに成長することを予見した人たちがどれだけいたのだろうか。愛を持って聴いてほしいアルバムだ。

 

13. Hot Space(1982)

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俗に失敗作と言われるこのアルバム。流行りのR&Bを取り入れた結果、今までの雰囲気と大分変わってしまい、ファン評論家ともに総スカンを喰らって、バンドは一時解散してしまう。実際に聞くと、確かにマイケル・ジャクソンのパチモンという印象は強いし、"Body Language"がやたらゲイ臭くて厳しいところもある。個人的には"Action This Day"が好きだし、B面は全体的に従来のQueenらしさは十分だし、何より最後の曲が"Under Pressure"であることから、簡単には全否定できない。しかし、やっぱりクソはクソである。しょうがない。

 

14. The Miracle (1986)

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シングル曲は"The Miracle"、"I Want It All"、"Breakthru"となかなか良いのだが、アルバムを通して聞くと最も個性の薄い作品のようだ。前作同様80年代臭がかなり強く、特段彼らの個性がないような気がする。やはりベストでさらっておけばOKな気がする。こんなアルバムでも全英1位を取っていたのだからQueenは本当に凄いバンドだ。

 

15 Flash Gordon (1980)

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映画のサントラなのになぜかディスコグラフィに含まれている。しょうがないのでとりあえず入れて置いたが、最初の曲と最後の曲だけ聞いていればokだ。映画は全く良い評判を聞かないのでわざと見ないようにしている。きっとこれからも見ることは無いだろう、、、

 

 

 

ということで以上、Queenアルバム全解説でした。

ここまで書いてなんですが、初めてQueenを聞く方はベスト盤の2枚を聞いていただければいいと思います。小学生の頃死ぬほど聞いていましたし、今でもベストが1番聴きごたえがあります。

それにしても2024年に聞いても個性爆発最高のバンドでございます。昔は本当にQueen以外のバンドを聞かなかったので分かりませんでしたが、今聞くとあらゆる影響が重なり合っていることもよく分かります。

 

皆さんもガンガンQueen聞きましょう。そんで東京ドームで一緒に歌おう。

 

以上